Palette Project 1st ワンマンライブ「Sing With You!!」感想 バーチャルがリアルで色とりどりになった時

待ちに待ったPalette Projectのワンマンライブが、ついに開催された。

あの時、僕らの求めたバーチャルが、リアルにまた一歩近付いたのを感じて、真っ先に出てきたのは「ついにやった」という言葉だった。

※なんでも許せる方向け、長いです


Palette Project、通称 “パレプロ” にも、2019年の発足から、Vtuberグループらしく紆余曲折様々なことがあった。

バーチャルアイドルとして走り出し、チラシ配りやメンバーチェンジを経て、イベントにも出始めた矢先にやってきた新型コロナウィルスのパンデミック。

収録用スタジオにも行けずレッスンにも制限が出る中、リモートでの配信やオンラインライブなど試行錯誤をしてきたが、やはりアイドルがいちばん輝くのはリアルライブの現場で、それはバーチャルアイドルも同じだ(現在のVtuber〜バーチャルアイドルシーンに至る5年については割愛)。

現在の8人体制になってから、一部のメンバーは一度もリアルのステージに上がらないままに、パレプロ発足から2年以上が経過してしまった。

Palette Project公式ショップ
現パレプロメンバーの8名

そんな時期、「重大発表」と銘打たれた配信で(パレプロは重大発表をしがち)、年末に待望のオフラインでのワンマンライブ開催が発表された。

そもそもパレプロはある時期から、アイドルとして “伸びる” ためにZepp DiverCity Tokyoでのライブのソールドアウトという、ファンから見てもなかなか無謀な目標を掲げ始めたのだ。

そのための方策としてまずは、節目節目でのファン獲得のためにライブを行うと言っていたが、とはいえこの情勢下、はっきり言って実現は難しいと思っていたし、リップサービス的な面もあるのだろうなどと甘く考えていた。

しかしそんな安易な予想を覆すワンマン開催告知に、心から驚いたのを今も覚えている。

Palette Projectの前身であるユニット Alt!! 時代にリアルイベント実施の経験があるとはいえ、運営としてどういうものを出してくるのかが全くの未知数で、熱量をどう維持するのか、配信ライブ時の演出と凝ったステージをどう現場に移し替えるのか、Vtuber・バーチャルアイドルのシーンにどういう攻勢をかけるのか、なにもわからないままに期待値だけを上げて当日を迎えてしまった。

会場の新宿アルタKey Studio前、ハトがたくさんいた       

寒くて仕方がなかった夜行バスから降り、友人や同じパレプロのファン(パレクル)と話しながら牛歩の物販を終え、ライブ会場である新宿アルタKey Studioの内部に入ると、ステージに並んでいたのはメンバーの等身大パネルだった。

テンション上げていいのか困惑していいのか迷いつつ、”ファンが育てるライブ” をコンセプトにしているスタジオの中央あたりで立っていると、30分遅れで待ちに待った公演がスタートした。

その後は、もう、ノンストップだった。

メンバーそれぞれの誕生日ライブの映像を使用したオープニングからファンの心を煽りまくり、8人全員で披露するライブ表題曲 “君と歌いたい歌がある” へ。

9月に開催された、オンライン特化のバーチャルアイドルフェス “えるすりー2” で初めて披露されたこの楽曲は、これまでグループが歩んできた道と現在の情勢、そして未来への希望を直線で結んだ同時代性の高いもので、ノリの良さと胸を掴むメロディと共に、一緒にまた歌おうという言葉をストレートに投げかける、今のパレプロを象徴する一曲になっている。

そう、今回のライブのタイトルに掲げた歌を真っ先に叩きつけることで、まず最初に宣言したのだ、「一緒に歌うんだ」と。

そのまま続けてカラフルな “きっと、アイだね” へ繋ぎ、盛り上がりは開幕から最高潮。

ステージ背景にもかわいい図柄が投影され、ダンス以外でも目を楽しませてくれた。

Twitterフォロワーを合計2万人を増加させて獲得したこの曲は、このグループのキュートな面にフォーカスした手触りのいいポップス。

ペンライトを活用できる場面の多い楽曲で、バーチャルなアイドルたちと、リアルな会場をグッと近いものにした。

……ここで会場の設備について言及しておきたい。

新宿Key Studioは、前面270度のスクリーンを備えた会場で、正面と左右斜めに3つの画面が用意されていた。

正方形だった “ニコファーレ” をもう少し広げたようなイメージをするとわかりやすいだろうか。

そのうちアイドルたちが登場するのは正面のみだったが、左右のスクリーンにも披露する楽曲に合わせた映像が流れ、特に会場中央から見ると、脳を揺さぶられるような感覚に陥ることがあった。

これがバーチャルアイドルのライブ演出として実に効果的で、「バーチャルってなんなんだ」という声へのひとつの回答になっていたように思う。

……今のVtuber・バーチャルアイドル業界には、現場主義を貫き生バンドとの共演などで業界トップクラスの実力と実績を持つ “えのぐ” 、ダンスとユーロビートという明確な武器を持ってavexから殴りかかる “まりなす” 、ディアステージ×スクウェア・エニックスという異色の取り合わせからMONACA楽曲を繰り出すリアル寄りアプローチが魅力の “GEMS COMPANY” など、それぞれ異なった手法で魅せるグループが存在している。

そんな中パレプロは、定期番組を持っているスタンダードなアイドルのノリに、よりVtuber的な、正確には「あの頃」のVtuber好きに刺さるような雰囲気をプラスしたところが良さだと自分は考えていて、しかしそれは言語化しづらい、触れてみて初めて刺さる、つまり他者に伝えるのが難しい部分があった。

Vtuberでありアイドルであるということをバランスよく両立しているのは凄いことなのだが、尖ったものを多数擁するVtuber界において、なかなか見つけてもらえないところがあったように思う。

それが今回のライブの内容とKey Studioという会場、映像表現で、見事にPalette Projectとはこれだというマイルストーンを打ち立ててみせたのだ。

話をライブに戻そう。

パレプロにはグループ内ユニットが3つ存在する。

ボカロダンス系ユニット “Altimate!!(アルティメット)” 、シティポップ系ユニット “Sputrip(スプートリップ)” 、メタルロック系ユニット “REGALILIA(レガリリア)” にメンバーがそれぞれ割り振られ、全員での活動と共にユニット単体でイベントへ出演するなど活動の幅を広げている。

よくある企画モノではなく、3つのユニットがそれぞれ並列に活動することにより、パレプロ自体がより幅広くリーチするという面白さがあるのだ。

8人で送る2曲が終わったあと最初に登場したユニットはAltimate!!、キレのあるダンスと王道っぽさが持ち味の3人だ。

Alt!!の楽曲を引き継いで2曲続けてカバーし、長年のファンを湧かせると、リリースされたばかりの新曲 “夢堕ち” へ。

この曲は2021年のマイベスト10曲に入れたくらいのお気に入りなのだが、妖しい雰囲気が耳を惹く疾走感抜群のダークポップスにして、ポストボカロ時代にバーチャルアイドルが挑む渾身の一撃だ。

また、夢堕ちが初披露されたのもえるすりー2の場だったが、その時は体調不良によりメンバーをひとり欠いた状態での発表で、歌もダンスも万全の状態ではなかった。

しかし今回は初めての3人での歌唱により、この曲が持つ真の姿が露わになり、鋭くキメるダンスを網膜に叩き込んできた。

とにかく嬉しかった。

【オリジナル曲】『夢堕ち』/ Altimate!! 3rd【公式MV】

もはやAltimate!!のライブに欠かせない2ndシングル “Summer is Over” を切なく紡ぎ、最後はデビュー曲の “Re:Myself” へ。

新衣装の3人で初めて見られたこの曲は、特にダンスがしっかりと見られてニッコリ。

今までのオンラインライブではカメラの切り替えなどでわからなかった細部まで、じっくりと目に焼き付けることができ、普段通りのゆるゆるMCと共に多幸感たっぷり、最後までふわふわしたまま駆け抜けていった。

Altimate!!はAltimate!!らしさをAltimate!!のまま届けるという、1stワンマンと思えない堂々としたパフォーマンスで後続のユニットへの道筋をつけた。

次に登場したのはシティポップをキュートに纏うSputrip。

ふわっとしたステージングと柔らかな歌唱で、80年代を現代に蘇らせてみせた。

雰囲気抜群のオリジナル楽曲も素晴らしいが、今までにカバーした楽曲をメドレーで送るコーナーは誰も予想できない良さで、間違いなく今回のライブのハイライトのひとつ。

Vaporwave的なVJ捌きは友人と「解釈一致だ」と盛り上がるほどの驚異の出来で、全身を楽しさに委ねることができた。

パレプロ全ての楽曲の中でも特に偏愛している “光の惑星” のキーボードソロを体感できて、ガンガンに首を振れたのはとてもいい思い出だ。

最後に登場したのはお待ちかねのREGALILIA。

メタルを歌い上げる異色のバーチャルアイドルユニットは、ライブハウスでの爆音に一番向いている。

オリジナル曲の “創造” からヘドバンでペンライトを振るのがおろそかになるほどアガりまくり、1年半以上前のユニット結成前に練習風景を見せていたBAND-MAIDの2曲連続カバーにボルテージは最大化。

もう長いことメタラーをやってきて、メタルを歌うアイドルも多く聴いてきたが、彼女たちにもしっかりとした魂が宿っている。

最後はVtuber・バーチャルアイドル界隈でも特に鋭く尖った”キライラ”を突き立てて、会場の人々の首を負傷させる大きな爪痕を残していった。

3つのユニット公演が終わり、パレプロに残るオリジナル曲は1曲のみ。

観客全員の想像通り、珠玉のバラード”君がいるから”を8人全員で暖かく歌い上げ、見ている人をひとつにしてくれた。

ちょうど2年前の12月末に開催された”V-RIZIN”というVtuber音楽イベントで初披露された、グループにとってもファンにとっても思い出深いこの曲を聴き、この場にやってくるまでの時間に大きく頷いた人も多いのではないだろうか。もちろん自分もその一人だ。

「君がいるからここまで来れたんだ」という詞は、あの瞬間、彼女たちの魂の叫びだった。

こちらこそ、ここに来てくれて、連れてきてくれて、心からありがとう。

しっとり終わるかと思われたライブは、まさかのAlt!! “アナログハート” 8人版で異次元のテンションへ。

Alt!!時代からパレプロへも継承されてきた、君に歌う、君に近付く、君に声を届けるという想いを、そのままメロディにのせて届けようと手を伸ばす、そんなキラキラとした美しい楽曲を全員で送る。

これ以上に強い決意はない。

振り付けやパート分けが8人に最適化されているとか、元Alt!!の2人がセンターにいるとか、振り付けがキュート過ぎたとかいくらでも言葉が出てきそうだが、ただ、ただ良かった、そう書いておきたい。

これ以上ないかたちで締めくくったライブだったが、熱いアンコールに応え、メンバーそれぞれによる心からのメッセージの後、再度 “君と歌いたい歌がある” へ。

このライブは、この歌に始まり、この歌で終わる必要があった。

やっとこの場所にたどり着いたことを示す一度目、そしてこれから向かうところへ明かりを灯す二度目。

過去でもない、未来でもない、今だからこそできるステージを、2回で表現したのだ。

虹を通り越したところへ連れて行ってくれたPalette Projectは、全身全霊で歌ってみせた。

パレプロが、ついにやった。

Palette Projectは基本方針として「バーチャルをもっとリアルで色とりどりに」というフレーズを掲げている。

彼女たちも、我々ファンも、あのライブを体験した全員が、この言葉の意味を初めて肌で感じ取ったのではないだろうか。

間違いなくあの時、バーチャルはよりリアルに感じられ、世界は色で溢れていた。

これこそが最もパレプロ的で、僕たちがずっと追い求めてきたものだった。

嬉しくて仕方がなかった。

最高のライブだった。

追記:ワンマンを見た人は絶対にこのツイートも読んでほしい。

パレプロの今後、期待してるからね。

以下、その他とりとめもない話。

……Vtuberファンとして、現地や配信でそれなりの数のライブやイベントを見てきたが、見せ方としてはこの規模とは思えない良さだったのではないだろうか。パフォーマンスもあるが、やはり会場のパワー、映像のパワーが大きく、今後のパレプロのライブのハードルが上がってしまった気がする。やっぱ黒背景じゃないだけで全然違うね。あと多少暗転を挟んでも曲の繋ぎをスムーズにしたほうが雰囲気出るわ。あとアナログハートは特に見せ方が上手くて、「もう吹き飛ばしちゃって」のところなんか

(メタ注意 

OptiTrackの3人トラッキングを感じさせない振り付けにしてあるところに夢を感じられたし、こういう方法もあるのか!と膝を打つ出来栄え。今アーカイブ見返してわかったけど、現地じゃ完全に惑わされたから本当によくやってくれたと思う凄さで

)すごい良かったんだよ。アナログハートが聴けて嬉しかった補正は多分にあるが、いいじゃないか人間だもの。

……もちろん、ライブが今後も続いてくれると思っているし、今は本気でZepp DiverCity Tokyoに連れて行ってくれると信じている。頼むぜ社長。頼むぜ佐藤P。

……会場内は良かったけど外の通路が狭い!狭い!物販とチェキ会が詰めまくり時間押しまくり!それでもこのKey StudioというところはVtuberのイベント向きな箱だと思う。会場としてすごい良かった。

……これを書きながら新幹線に乗り、東京から戻り、アーカイブを見返している。ライブの撮影はもう一歩踏み込んでもよかったけどなぁという惜しい出来だけど、会場の熱気が少しでも伝われば。あとこれはあまり関係ない話で、Vtuber業界全体に言えるんだけど、スクリーン直撮り文化ってそろそろなくなりませんかね。うまいこと映してるのと会場撮影とを混ぜて配信するのって無理?そういう意味でも、あと自分が地方在住なのもあって、オンラインライブ好きなんだよなぁ。配信という見せ方に特化したものってさ、インターネットを通じて平等に熱量を届けてくれるわけじゃん。それがVtuber好きになった理由みたいなところはあるかもしれない。ないかもしれない。それはそれとしてさ、今回の会場は熱くてよかったんだけどね。本当にREGALILIAの映像表現とか脳みそグワングワン揺れたからね。

……ライブ後のチェキ会はね、良かったね……。モニターを使ったオフラインでの交流なんて、言ってしまえばVtuberイベントではよくあるものだけど、ちょっと話して仕込んだネタ使って笑顔になるの、すごい良い経験だったよね……。撮ってもらったチェキ、大切にしよう……。でも、有線マイクとヘッドフォンを使わなくっても別にいいんじゃないかな。普通のアイドルさんみたく他の人から見えても聞こえてもいいんじゃないかな。時間かかって仕方ないし。まぁこれも今後に期待。あ!あと「推しとファンが似る」を地で行ってるのが見て取れてすごくほっこりした。パレプロでもやっぱりそういうのあるんだ!って。

……推しの 神菜コハネさん が素晴らしくかわいかった。Altimate!!の出番の時ポカーンと見てることしかできなかった気がする。8人全体曲でダンスよりも手を振ってファンサービスの方に熱心だったのが本当にありがたすぎた。かわいすぎた。夢堕ちのダンスあと6億回見れる。

……みなさん神菜コハネさんを、パレプロメンバーみんなをフォローしてください。YouTubeのチャンネル登録 もしてください。本当にいいよ。

……これからのパレプロの活躍が本当に楽しみだ。

……はいここからコハネ先生のかわいい画像集貼りまーすおわりでーす!

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