2023年上半期のおすすめメタルコアを大雑把に紹介してみるよ

凍結される前の自分のTwitterアカウントを検索してみると、2011年くらいにはもう「メタルコアは死んだ」とか言われてムカっときていたらしい。

それから流れ流れて約10年、未だメタルコアはピンピンしている、どころか今まで以上に元気にしております。

特に2023年はかなりの豊作で、5年に1枚レベルのアルバムが次々出てくる、にわかに信じられないような状況。

リスナーとしてはありがたいものですが、大作の波で溺れそうになっている人も多いはず。

そんなわけで、大雑把ながら今年の当たりを紹介していってみるよチェケラ。

Periphery – Periphery V: Djent Is Not A Genre

みんな大好きPeriphery

大傑作であった”IV: Hail Stan”と同じく自身の3DOT Recordingsからリリースされた4年ぶりの新譜に、どこか肩透かしだった人も多いのでは。

正直前作と比較してしまうとやたらと長いアウトロが鼻につき(前作もCrushのアウトロとか長すぎた気はするけど…)、アルバムの勢いを削いでいる印象を受けたり、長尺傾向に拍車がかかっているのがどうにも弱く感じたり。

とはいえそれはあくまでPeriphery IVと比較しての話であり、アルバム単体で考えればやはり凄まじい念の込められた一発であることには違いなし。

殺気あふれるミーシャのギターワークに、あらゆるレンジで暴れ回るスペンサーのヴォーカルと、Peripheryらしさは変わらないので安心して楽しめること間違いなし。

特にWildfireEverything is Fine!の1~4曲目の流れは素晴らしく、Wax Wingsのメロディは奇跡のような出来栄え。

というかWax Wingsを聴いてほしくて紹介しているまである。本当に良いんだ。

メタルコア好きはもちろん、何故かここにたどり着いてしまっただけの人もとにかく聴いてほしい。

叫んだりしないから。ひたすらに美しいから。

その他にもゲーム”Hades”から大胆に引用したZagreus(タイトルは主人公である神様の名前そのまま!)、10分間キレイに暴れる(つまり残り2分半は要らないアウトロの)Dracul Grasなども収録されており、見どころ多数。

何度ループしてもThanks Nobuoがどういう曲だったか思い出せないものの、今年のメタルコアを俯瞰する上では外せないアルバムだろう。

次はセルフプロデュースをやめて外部の人間入れて、アウトロ長くしがちな癖を直してほしいけど。


Invent Animate – Heavener

いつの間にか名前がInvent, Animateから変わっていた彼らの4枚目のアルバムは、間違いなくバンド史上最高の一枚として輝き続けるはず。

カンマで区切られることのない濁流のようなメロディに埋もれる幸せを全身で浴びられる46分。

タイトル通り天国のような浮遊感と、地獄へ立ち向かうような強靭さを両立させる技に驚きっぱなし頭振りっぱなし。

Invent Animateはどのアルバムも好きなんだけど、これはちょっと別枠かもなと思ってしまうくらいには良かった。

今までのようにメロい部分は徹底的にメロくしながら、ヘヴィな部分ではギラリと牙むく力強さが魅力的。

何はなくともWithout A Whisperを聴いてみてほしい。どこからこのメロディを持ち込んだんだ。不法入国だぞ?

この曲のMVは神々し過ぎて、動くステンドグラスを眺めているような気分になってくる。

メロデスというジャンルは、「叫ぶことでメロディを際立たせる」ことから生まれたが、それの反対をやってみせたのが今作だと思う。

なんか書き方的にメロ特化かと思っちゃうじゃん?それがそうじゃないんだな。

Immolation of Nightのようなぶっ壊し系楽曲も同時に収録しつつ、バランスが崩れてないのが凄いんだよな。

あと今作はダウンロード版購入後にCDでも買ったんだけど、オマケが充実しててとてもよかった。

どこを切り取っても美しく、同時にクレイジー、そんなアルバムが欲しい時はありませんか?ここにありますよ。


August Burns Red – Death Below

はいはいABRね有名所でしょ、みたいなリアクションをする前にとりあえず聴いていただきたい10枚目のアルバム。

このシングル全盛時代に途切れのない展開をするコンセプチュアルな雰囲気と、隙間があれば音を詰め込む作風が見事にマッチした良作に仕上がっている。

こっちのアルバムも若干アウトロいらない問題とか間奏長すぎ問題(最近のErraじゃあるまいし…)が浮上してる気はするんだが、それでも気付いたら次の曲へ飛んでるし、そちらで耳に音を突っ込んでくるからあまり気にならない。

なにより記憶に残らない出来だった前作よりずっと良い!

みんなABRは一通り聴くでしょ、それでLevelerが好きとかPhantom Anthemがいい(自分のこと)とか分かれていくけど、そんな流れに分け入っていける一枚だと思う。

そんな中でもAncestryはKillswitch Engageのジェシー・リーチをフィーチャーする大胆な手を使って強烈な印象を残していく良曲!

サビメロの疾走感に自分の中のメタルコアキッズが右腕を突き上げてしまう。

ジェイソン・リチャードソンら、他のフィーチャーもバッチリキマっていて、安心してABRメタルコア号に乗り込むことができるだろう。

マジで何食って育ったらこんなに音を詰め込もうって気になるんだ?

情報量の多さでカロリーを消費したいときにもうってつけ。


Bury Tomorrow – The Seventh Sun

これが7枚目(!)になるのに日本ではイマイチ知名度が上がらないBury Tomorrow。

最新作は彼らの音楽、つまりオールドタイプなメタルコアをそのまま成長させたド安定の一本。

Djentぶってみたりポストハードコアに寄ってみたり、マス受けを狙ってBMTH化したりといったことのない作風は逆に新しく見えてくるのでは。

デビュー当時からバンドを引っ張るダニエルの咆哮はオンリーワンの存在感を放っているし、新加入のキーボーディストであるトムのコーラスメロも冴えている。

それ以上に書くことあったっけ?ってくらいシンプルにまとめちゃってしまったが、それくらい1曲1曲がコンパクトにBury Tomorrow節で丁寧に仕上がっているのだ。

それでいいのだ。

そんな中で挙げるとすればWhile She Sleepsのロズが参加したHereticだろう。

なによりもロズの”I’m going in!”の叫びが気持ち良すぎる。

殺気に満ち満ちた破壊力満点の一発に、メタルコアファンならときめかないはずがない。

Boltcutterのようなゴツい手触りの曲あり、タイトルトラックのような光差すようなサビメロ登場ありと、なんだかんだ一辺倒じゃないあたりも器用なんだよな。

これが気に入ったら彼らのアルバムを順々に遡っていくと幸せになれるはず。


The Ongoing Concept – Again

このアルバムを何年待ったことか……!(6年です)

もう一度!と銘打たれたThe Ongoing Conceptの新作は、イントロ曲以外全部、過去曲にAgainをつけたタイトルで出来上がったヘンテコな一枚に。

そんなアルバムなのに一番入門向けってどういうセンスしてるんだよ、凄すぎない?

彼らお得意のサザン・ロックを持ち込んだメロディックメタルコアは、マジで聴きやすいくせにヘヴィで抜群にノリが良い。

なんだか玄人向けっぽそうに見えるけど、そうじゃない、そうじゃないんだな。

生っぽい音使いが実に軽妙で、一度聴くだけで耳に浸透するメロはキャッチーの極み。

それでいながらメタルとしての厚みを備えている、まさにオンリーワンな楽曲のオンパレードなんですわ。

キラキラしたキーボードや静かなパートで流れるピアノなんかが全然押し付けがましくないし、アイダホ産地直送なギターもぶっといのに他と調和している。

The Ongoing Conceptという枠組みでやれること全部ぶち込んでいるのに、アルバムとしてピチっとまとまっている。

こんなことができるのは彼らだけなんじゃないだろうかと錯覚する素晴らしき4枚目。

楽器から作り始めたおバカで良い2作目の感想はこちら。

……ちなみにPeriphery VからAgainまで、今まで取り上げた全部が3月にリリースされたって信じられなくないですか!?

この月は次から次から傑作が出てきたから本当に幸せだった。


Currents – The Death We Seek

……そして出てきたのがこいつですよ。

これ。本当にこれ。間違いなく今年のベストアルバム。

地味に2015年のLife // Lostの頃から追っていたけど、ここまでのアルバムをモノにできるとは夢にも思っていなかった。

メタルコアの現在形を世界に示す、究極の10曲40分。

暴虐の限りを尽くすリフの前には何人たりとも立ち向かえず、差し込まれるコーラスは光のように全身を包み込む。

それなりに音楽を買っている自分だけど、全曲水準以上に気に入ってアルバムまるごとプレイヤーに入れたのは、バンド単位で入れているもの以外だと2017年のPhantom Anthem以来かと思う。

どこまで褒めても褒めすぎにならないくらいの超傑作。

Unfamiliarのような憂鬱な甘さを帯びた曲から、Vengeanceのような破壊衝動に任せたような曲までよりどりみどり。

Over And Overの疾走メロからGone Astrayのイントロまでなんでもござれ。

そんな中でもとにかく2曲目Living In Tragedyを聴いてくれ。

リフの凄さに思わず笑いが出てしまったのは久々の経験だ。

地を這うようなローから飛びかかるようなハイまで全部こなす、ブライアンのヴォーカルワークは何度聴いても恐ろしいほど素晴らしい。

別次元に降り立った恐竜が大量の獲物を前に咆哮しているような凄みがある。

なんでこの内容で4分で収まるんだよ。もはや異常だろ。

良すぎて5億回聴いたわ。

というか全曲小細工なしのメタルコア一直線なのにこれだけ幅を持たせつつ全部が良いってどうなってるんだ。

今後10年を変えてしまう一枚。

絶対聴け。


他にもVeil of Maya待望の新譜や大復活を遂げたThe Amity Afflictionのアルバム、UnearthThe Acacia StrainJohnny BoothBorn Through Fire、話題を呼んだSleep TokenFalling In Reverseも取り上げたかったけど、疲れたからこの辺で。

とにかくここに取り上げたアルバムを聴けば、メタルコアちょっとわかるくらいになれること間違いなし。

コーナーで差をつけてクラスの人気者になろう。そして放送室からLiving In Tragedyを流そう。

下半期もまとめて書きたくなるくらいには良作揃いの年だと思う。



暇だったらな!


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